今回は、「盤上の向日葵(上・下)」。
孤狼の血は、本当にすごい作品でした。
もう夢中で読んでしまいました。
続編の「暴虎の牙」も非常に面白かったです。
女性が書いているっていうのが、また驚きですが。
今回の「盤上の向日葵」は、いままでのと異なり、かなり静かに物語は進んでいきます。
じわじわっていう感じ。
特に面白いのが、将棋の駒。
この物語のキーとなるのが、初代菊水月作錦旗島黄楊根杢盛り上げ駒。
(読み方:きんきしまつげねもくもりあげこま)
この駒を追い求めていくうちに。。。
説明 注!ネタバレ
概要はと言うと。
天木山の山中で、中年男性の死体が見つかった。
その男性の身元は不明だが、一緒に埋められていたのが、この駒だ。
初代菊水月作錦旗島黄楊根杢盛り上げ駒。
(読み方:きんきしまつげねもくもりあげこま)
将棋を知らない人にはよくわからない事だが、これはかなり貴重な駒だそうだ。
菊水月というのは、昔の駒師である。
生涯でたったの7組しか、駒を作っていないとのこと。
石破刑事と、佐野刑事は、この駒を追うことになった。
七組あるという駒をそれぞれ潰していく。
見つからなかった駒の最後の持ち主が、この事件に関係していると。
そして最後にたどり着いたのが、東大卒のエリート棋士である上条佳介。(六段)
現代で、将棋界の若き天才棋士である壬生芳樹と、竜昇戦に挑んでいる。
物語は、上条佳介の生い立ちから、現代の駒の捜索が並行で描かれている。
読んだ時の感想
柚月裕子氏の小説は、なにか引き込まれるものがある。
こう、なんかわからないけど。
序盤から不思議と引き込まれていく。
上条佳介の小さい頃の話は、ほんとうになんかぐっとくるものがある。
育児放棄。
これはいつ読んでも、やるせない気持ちになる。
しかしそんな親からもらった、たった一つの飴玉が、他の大人からもらったどんなお菓子よりも嬉しいというのも、またこれ切ない話なんだよな。
その嬉しそうに笑う顔を見ると、そんな親と離れ離れにさせることが本当にいいことなのか、戸惑わせてしまう。
そこは子供の判断ではなく、やはり大人がしっかりと判断するべきなんだろう。
大人がその笑顔を見て勘違いしてはならないと。
将棋の駒については、こういうの結構好きだなって。
名工が作った数少ない傑作。
将棋の駒については、少し変わっており、いい品も将棋の盤で実際に使ってやらないと、その駒は死んでいるのと同じって思われているところ。
これは本当にそう思うな。
なんにしても実はそうなんだと。
ゴルフクラブにしても、バイオリンにしても、ピアノにしても。
名器と呼ばれるものは、なぜ名器なのか。
それは使って初めてわかるってものですよね。
見て楽しむものではない。
実際使ってみるべきだ。
将棋の駒については、実にその考えが浸透しているようで。
いいと思いますね。
だから文中でも、初代菊水月作錦旗島黄楊根杢盛り上げ駒も、実際に使われています。
この物語に出てくる東明という真剣師。
この真剣師とは、賭け将棋や、賭け麻雀といったテーブルゲームの賭博により、利益を得て、生計を立てている者のこと。
真剣に勝負するという意味で、真剣と呼ばれているようです。
表舞台に立ち、賞金を得るプロとは異なり、裏で個人相手に賭博で金を設ける人たちのことですね。
裏プロとかいうそうですが。
結構麻雀の世界では、よく聞いたことがありますがね。
桜井章一氏なんかがそうではないかと。
将棋の勝負の場面が結構出てきますが、これ、将棋がわかってる人が読めば、本当に面白いんだろうなって思いますね。
あえて言えば、小説の中に、盤を見せてくれれば、多少は楽しめたかもしれませんが。
少しぐらいは将棋分かるので。
この作品も、なんか動画で観たくなりました。
調べてみると、NHKプレミアムで放送されているそうです。
総評
◆読みやすさ
読みやすさ:4
すごく読みやすい。
ただ、将棋の動きについては、まったくわからん。
それはそれでも十分楽しめる。
もっと将棋の事を知っていたら、すごく楽しめるんだろうなって。
◆意外度
意外度:2
意外度はないな。
うすうすなんとなくわかる。
それよりは、途中の話が面白くて、意外度を求めるという気があまりない。
逆に期待を裏切るようになってほしいと願ったりもする。
◆夢中度
夢中度:5
上・下とあるが、もう夢中で読んだね。
柚月裕子氏の小説は、本当に面白いな。
どちらも薄いので、意外とすぐ読めた感じがする。
もっと厚くてもいい感じがするね。
◆読んだ後のすっきり度
読んだ後のすっきり度:4
最後は、もっといい感じに終わってほしかったな。
上条を応援してしまう。
もっといい感じに終わってくれたら、スッキリするのにな。
最後は一体どうなったのか。
なんとなくわかるが、最近はどうなのかな。。。。
この意味は。。。。
読書について
本を読んでいると何か吸い込まれるように、その物語の中に没頭してしまいます。
いい意味でも、悪い意味でも。
時に深く考えさせられることもあります。
人生にとって読書、本を読むというのは非常に大切なことだと私は考えています。
最近世間では本離れが進んでいると言われています。
本を手にする代わりに、なんでもスマフォで調べたり、スマフォで小説を読んだりと。
ある意味それは時代の流れかもしれないのですが、しかし私は紙の本を手に取って読んでもらいたいと考えています。
もちろん中には読むに値しない駄作も数多くありますが、それ以上に良い本はたくさんあります。
駄作の中にもそれぞれ考えさせられることもあり、無駄な本はあまりないと考えています。
もっとみなさん本を読みましょう。
そこから何か、ほんの少しでも自分を高める何かが見つかるような気がします。
ほんの少しかもしれませんが、それが積もると立派な財産となります。