今回読んだのは、「一億円のさようなら」。
まずタイトルに惹かれたね。
なんか、投資とかそういうたぐいの本かなって。
あと、その本の厚さ。
読みごたえがある本が好きなんで。
薄いと本当にすぐ読んでしまうので、もったいないから。
でも読んですぐわかる。
これは投資とか運用とか、そういうものではなく一人の男性。
一つの家族。一つの夫婦の物語だと。
結婚して長いこと過ごしていると、どうしても感じる違和感。
それが見事に描かれている。
説明 注!ネタバレ
概要はと言うと。
東京から10年前に福岡に引っ越してきた加能一家。
伯父さんの伝手で入社した就職先は、加能産業。
マンションも買い、平凡な生活をおくっている。
平凡と言いつつ、会社では期待されて専務への昇進もかかっていた矢先、なぜか左遷の目に。
子供たちは、鹿児島と長崎にそれぞれ大学進学で家を出ている。
そんな矢先に、インフルエンザの疑いがあったため、家で留守番をしている時に、東京の弁護士から電話があり、妻である夏代に多額の遺産があることを知る。
その事実を知ったことを境に、鉄平の心の何かが変わってくる。
20年以上連れ添った夫婦のきずな。
小説は3部構成となっています。
1部は、舞台は福岡で、妻の夏代との関係。
会社のいろいろなごたごた。
あと家族。
息子と娘、それぞれがかかえる問題。
それがこれでもかというぐらい一気に襲ってくる。
2部の舞台は金沢。
金沢、好きなんですよね。私も。
東京転勤時代に、大阪に帰ってくるときは、わざわざ金沢経由で帰り、いろいろ探索したりもしました。
また、先輩が金沢支社に長期出張で行っている時に、誘われて遊びに行ったこともあります。
香林坊とか懐かしいなって思いましたね。
第二の人生を送るには、もってこいの土地ですね。
問題は天気かな。
小説の中でも言われているように、イギリス同様傘が必需品である。
どんよりとした天気に心まで落ち込んでしまいそうな。
北陸の大学に通っていた友達がやはり言ってたわ。
天気が悪いって。
正直それだけで、ちょっと尻込みしてしまう。
鉄平は、もともと優秀な営業マンということで、序盤はあまりそういう感じはしなかったけど、かなりのやり手だというのが徐々にわかってくる。
3部は、それらをまとめて、最終章に向かって走り出すという感じ。
全部で700頁弱の大作ですが、わずか2日で読んでしまった。
読んだ時の感想
正直、今まで警察ものとか、少々暴力的な本ばかり読んでいたけど、やはりこういうのは結構好きだな。
なんか、うーん、すごく気持ちがわかるというか、いい感じがする。
最初はすごく腹が立つことがある。
それは、弁護士。
夏代の財産を管理している弁護士が、信じられないくらいの信頼度のなさ。
電話をかけてきて、いくら夫だと名乗ったとしても、個人の資産の話をぺらぺらとしゃべること。
弁護士なら、婚姻前の財産とか、相続した遺産は、離婚したときの財産分与の対象にはならないというのは、当たり前のごとく知っているはず。
なら、妻の資産について、妻の生の承認なく夫に話すなんて、もうありえないと思ったわ。
その間ひとことも夏代と会話していないにもかかわらず。
これは、すぐに本を閉じようとしたぐらいの内容だった。
まぁ、その後の流れが、非常に良かったため、すぐに忘れることができたが。
この肝になるところで、遺産のことを夫が知るには、こういう流れしかなかったのかと。
あきらめるしかないかな。
しかし、ほんとに鉄平ははたから見ると家族には恵まれていると思うわ。
こんな家族のどこに不満があるのかと、正直信じられないって思う。
夏代は小説の中で、女優かと見間違えられるほどの美貌の持ち主となっている。
その上、仲もよい。
子供たちのことも、母親にだけ相談し、父親に相談しないというのは普通の事だと思うけどな。
しかし、遺産の額はほんと半端ない。
確かにこれぐらいの額があると、人生と言うか考えと言うか。
すべてがひっくり返る。
人生狂ってもおかしくない。
それをきっちりと自分一人の中で、割り切る夏代は、ほんとうに鉄平にとっては本来手放したら駄目な存在だとおもう。
20年と言う長い年月に築き上げた信頼と言うところが、夏代の秘密により、崩れて行くということだが。
20年という年月が、逆にそういう心理に向かわせるんだろうな。
金沢での生活は、なんかこういう第二の人生憧れるなって感じで読んでいた。
全く知らない街で、やりがいのある仕事を見つけて。
いい出会いもあり。
北陸と言うのは、ほんとうにおいしい食べ物が沢山あるんだろうなっていうのも、興味深い話だった。
確かに先輩のところに遊びに行ったときに、ホタルイカの踊りを食べた時には、本当においしかったわ。
普通の居酒屋だった気がするが。
今なら、日本酒と日本海の海の幸を楽しみたいなって思うな。
夏代と離れ離れになり、金沢で生活していく鉄平。
2人の間にほとんど会話とかやり取りがないのが非常に気になる。
電話は解約もしないで、いつでも話ができる状態なのに。
すごく不思議だった。
しかし、どうしても夏代とよりを戻してほしいって、読みながらずっと思っている自分がいて、後半はもう夢中で読んだ。
本当に不思議な小説だったな。
普通は一度読んだら、大概次の本に移るのに。
この本は、読み終わってから1週間以上経つのに、まだ手元に置いて読み直してる。
なぜなのか。
それは読んでみると、ひょっとして分かるかも。
総評
◆読みやすさ
読みやすさ:3
少々、よみづらいような。
なんだろうか。
まず、何かイベントがあった時に章が終わる。
あれ?あの続きはどうなったの?っていうことで、次の章を読むがなかなかどうなったのかわからない。
後半夏代に出した手紙の内容は、それは最後まで明かさないのが正解だが、それ以外は。。。
◆意外度
意外度:3
微妙。
意外度はそれほどないかな。
ある程度は流れに沿ってと言う感じ。
最後はどうか。
それは読んでからのお楽しみでしょう。
◆夢中度
夢中度:5
700頁弱の小説を2日で読んだんだから、面白いに決まってる。
もう夢中って感じ。
警察ものとか、推理小説でもないのに。
不思議な小説だ。
◆読んだ後のすっきり度
読んだ後のすっきり度:3
これ微妙。
で、けっきょくどうなったん?
って、エピローグとかで、もっとはっきりと書いて欲しかったな。
おいどうなったんだ!ってつっこみたくなる。
ほんとにおしえてほしい。
強く続編を望みます。
読書について
本を読んでいると何か吸い込まれるように、その物語の中に没頭してしまいます。
いい意味でも、悪い意味でも。
時に深く考えさせられることもあります。
人生にとって読書、本を読むというのは非常に大切なことだと私は考えています。
最近世間では本離れが進んでいると言われています。
本を手にする代わりに、なんでもスマフォで調べたり、スマフォで小説を読んだりと。
ある意味それは時代の流れかもしれないのですが、しかし私は紙の本を手に取って読んでもらいたいと考えています。
もちろん中には読むに値しない駄作も数多くありますが、それ以上に良い本はたくさんあります。
駄作の中にもそれぞれ考えさせられることもあり、無駄な本はあまりないと考えています。
もっとみなさん本を読みましょう。
そこから何か、ほんの少しでも自分を高める何かが見つかるような気がします。
ほんの少しかもしれませんが、それが積もると立派な財産となります。