今回は、「検事の死命」。
柚月裕子の作品です。
前回読んだ「検事の本懐」が非常に面白くて、佐方貞人検事の話を読みたいなって思い、図書館で探しました。
もう一つ、「検事の信義」と言うのがあるんですが、残念ながらそっちは貸し出し中でした。
また次見つけたら読みたいと思います。
説明 注!ネタバレ
概要はと言うと。
今回も短編集となっています。
全部で四話あります。
ただし、後半の二話は、続きです。
第一話は、「心を掬う」
これは、ある郵便局で、手紙が紛失すると言うもの。
最初のきっかけは、飲み屋で親父が、ふと手紙が届かないことがあってという話をしました。
ほとんどの人が、ふーんってなる中、佐方検事は何か引っかかると。
次の日、すぐに事務次官に紛失した手紙がどんな物だったのかを調べてもらうように依頼しました。
なんとそこからとんでもない事件が。。。
第二話は、「業を下ろす」
前回の「検事の本懐」で、少しモヤモヤってなっていた物ですが、この作でスッキリしました。
前回は、記者が知れべていましたが、今回はなんと住職が自ら。
そして本当の真実を突き止めるのです。
そしてそれを公の場で。。。
第三話、第四話「死命を賭ける」「死命を決する」
第三話は、刑事部編。
第四話は、公判部編。となります。
公判部とは、刑事部が起訴した案件を裁判で立ち会う部署となります。
まぁ、流れから、刑事部の時に、起訴した案件を自分で裁判に臨むと言うことになります。
冤罪やら、地元の有力者、政治家。
なかなか悪い奴らが出てきます。
本当に、最後までハラハラする、すごく面白い展開になってます。
この中で、前回の「検事の本懐」で、あの後どうなったんだろうって疑問に思っていたことが少し明確になります。
それは後で。。。
読んだ時の感想
さて、佐方検事の二つ目の本となりました。
佐方弁護士では、以前「最後の証人」という本を読んだんですが。
その時には、こんなつながりがあるって知りませんでした。
前回の流れから、この本は繋がっています。
したがって、「検事の本懐」を読んでいると、非常にスムーズに頭に入ってきます。
相変わらず佐方だし。
上司も相変わらず。
頼りになるし。.
個別に感想を書いてみると。
第一話の「心を掬う」
掬うって難しい字ですね。
この掬うと言うのは、救うとは異なり、何か粉状のものを集めるという意味があります。
後、優しく下から上へ持ち上げると言う意味も。
これはこの話の中の、手紙を指しています。
ネタバレとなりますが、通常お金を送付する場合には、現金書留で送る必要があります。
でも、結構手間なので、額が少ないと手紙の中に紛れ込ませて送る場合もあるようです。
その手紙は、田舎のおばちゃんやおじいちゃんが、孫なので入学祝いを送ったりとか。
子供が心配で、何かの足しになればと、少額ながら気持ちとしてお金を送るなど。
それを何者かが横からくすねている。
それは、もう佐方にとっては許し難い行為だと。
徹底的に追い詰めます。
時に。。。までして。
第二話は、「業をおろす」
佐方検事の父は、顧問企業からお金を横領したとして逮捕され、その獄中で病気により亡くなっています。
顧問企業と言うのは、親子代々世話になっている深い絆で結ばれている人が経営している会社でした。
なぜ、父はそんな恩を仇で返すようなことをしたのか。
でも、佐方や一部の人は知っていたのです。
しかし、父親との約束を愚直に守っていたのです。
どんなに冷たい目を向けられても。
自分ならと思うと。父親の本当の姿をみんなに伝えたく仕方ないだろう。
住職は、父の親友でした。
住職も長い間、なぜそんなことをしたのか不思議で仕方ありませんでした。
で、ある時、ある女性との出会いがきっかけで、もう一度確認してみようってことになりました。
そこで、住職は真実を突き止めたのです。
それを法事の場で、みんなに話したのです。
これは、体の隅々から人の悪意というか、なんというか、全て溶け落ちるような感覚が。
読んでいて、たまにこういう時ってあるんですよね。
人っていいな。って。
日本人って本当にいいなって。
すごく優しい気持ちになるんですよね。
第三話、第四話
これは、地元の有力者の家族の痴漢事件。
特に有力な証拠がない中、いろんなところから圧力がかかる。
しかし、怪しいと睨んだ以上、執拗に証拠を追い求める。
なんで、政治家とか上層部って、こんなに腐ってるんだろう。って。
もちろん小説だからという面もあるんだけど、何もないところで、全くの作り話というわけでもないので、多少なりともそういうのはあるのかと。
しかし、まぁ本だけの世界ではなく、なんか痴漢とか気持ち悪いよな。
一瞬で全ての信用を失うリスクがあるのに、なぜ公共の場でそんなことをすんだろうって。
そもそも、女性をきちんと尊重していないってことではないのか。
関西では、あんまり聞かないんですけどね。
まぁ、関東ほど満員電車っていうのが少ないんですけどね。
裁判の場面では、本当にハラハラして、夢中で読んでしまいましたね。
読んだ後は、スカーッとします。
スッキリ感は半端ないですね。
総評
◆読みやすさ
読みやすさ:4
前作「検事の本懐」を読んでいると、非常に読みやすいですね。
登場人物はほとんど変わらないし。
ストーリもとても理解しやすく、頭にすいすい入ってきます。
◆意外度
意外度:2
意外度はあまりないかな。
こうなればいいなっていうのが、そのままその通りに進むと行った感じ。
それがそれで気持ちいいというか、スッキリする。
◆夢中度
夢中度:5
もう後半は特に夢中になって読みましたね。
夢中度でいうと、最高ですね。
もっと読んでみたいと思わせる小説です。
佐方検事シリーズが少ないんですが、もっと長く連載して欲しかったなって今思いますね。
◆読んだ後のすっきり度
読んだ後のすっきり度:5
もうスッキリ。
これ以上ないだろっていうぐらい、後味スッキリ。
まぁ、しかし、今後なぜ弁護士に転職したのか、少しわかるような気がする。
検事として、もっともっと偉くなって欲しかったんですが、それを素直に評価できる制度がなかったと。
その辺が残念ですが、今回の本の中では、そこまで書かれていないので、まぁ、この本としては後味スッキリですかね。
読書について
本を読んでいると何か吸い込まれるように、その物語の中に没頭してしまいます。
いい意味でも、悪い意味でも。
時に深く考えさせられることもあります。
人生にとって読書、本を読むというのは非常に大切なことだと私は考えています。
最近世間では本離れが進んでいると言われています。
本を手にする代わりに、なんでもスマフォで調べたり、スマフォで小説を読んだりと。
ある意味それは時代の流れかもしれないのですが、しかし私は紙の本を手に取って読んでもらいたいと考えています。
もちろん中には読むに値しない駄作も数多くありますが、それ以上に良い本はたくさんあります。
駄作の中にもそれぞれ考えさせられることもあり、無駄な本はあまりないと考えています。
もっとみなさん本を読みましょう。
そこから何か、ほんの少しでも自分を高める何かが見つかるような気がします。
ほんの少しかもしれませんが、それが積もると立派な財産となります。