何年かに一度、すごい本に出会うことがあります。
今回は、本当にここ10年ぐらいで一番役に立った本ですね。
もう投資というか、運用についての考えがスカッと変わります。
もちろん、近いことは考えていたんですが、ここに書かれてあるのは、納得感があります。
本当にみんなに読んでもらいたい本ですね。
この本「The Psychology of Money」(サイコロジー・オブ・マネー)(著者:モーガン・ハウセル)は、小説とは違いますが、役に立ちます。
この本を読んで感じたこと、伝えたいことを書きたいと思います。
人の投資判断は人それぞれ
人は、経験した人生により、投資判断は全く違ってくるというもの。
人がなぜそのように動くのか。
それは、人それぞれに、判断基準があるからだということ。
昔の人は、銀行に預けていると、年利で7%程度の金利を得ることができました。
その時の記憶がしっかりと埋め込まれている人にとって、貯金というのは、やはり今でも第一に考えるべきところなんですよね。
しかし、すでに金利がもうかなり低くなっているときを知っている場合、貯金なんてするもんじゃないって思います。
貧困層が宝くじを買う理由というのが、結構納得いきましたね。
みんな確率というのは理解しているんだけど、万が一当たればというのを期待してしまう。
もう少し裕福になるというのが、基本的に難しいという考える場合、宝くじに頼ってしまうということ。
ある程度裕福であれば、宝くじに投入する金額を増やすことを考えられるんだけど。
小さな投資が大きな資産を作る
地球に定期的に訪れる氷河期。
これが非常に興味深い話でしたね。
氷河期は過去、地球に5度起こったとのこと。
この氷河期が起こるほどのパワーは一体どれほどのものなのか。
どこからそのパワーが来るのかということは、長年科学者が研究してきたそうです。
しかし、本当はそのような大きな力は必要ではなく、小さな気候変動だけで、全地球を凍らせるほどの氷河期が生み出されたとのことです。
現在では、この仮説が正しいことが証明されています。
その仮説とは、太陽と月の引力は、太陽の周りを公転する地球の軌道の傾斜に穏やかな影響を与えています。
この変化は、数万年単位に周期的に発生します。
その結果、地球の半球に浴びる太陽光の量がごくわずかに変化します。
ミランコビッチの仮説では、その変化により氷河期がくるとしていましたが、その仮説を掘り下げたロシアの気象学者ウラジミール・ケッペンが、その変化が劇的でないという事実を発見しました。
要するに、その変化は微量で、わずかに溶かす氷を減らす程度の効果しかなかった。
しかし、そのわずかに残った氷の上には、また雪・氷が残りやすくなります。 万年雪は日光を反射するので、気温が下がりやすくなります。
ということを数100年繰り返すことにより、氷河期が起こるということだそうです。
この事実は、今言っている地球温暖化とかの議論についても、一石を投じそうな気もしますね。
ただ、どのスパンで考えるかによると思いますね。
生物が文明を築いている期間で考えるのと、もうその範囲を遥かに凌駕した数万年規模で考えるか。
短い期間で考える人は、人類の文明活動により影響を及ぼす範囲を言っているし、そもそも地球規模の定期的な周期として考える人は、地球温暖化もそのうちの一つで、人類が多少なんか細工してもなんら影響を与えないと。
まぁ少し話はそれましたね。
ここで何が言いたいかというと、少しの変動が、のちの大きな変更につながるということです。
これは運用でいう複利の効果を表すのに、適した事例ということで紹介されています。
複利って、最初は小さく、あまり効果は見られません。
しかし、それが長い期間続くことにより、大きな利益になるということなんです。
運用では時間を味方につけろって言いますよね。
これはそこにもつながるんですよね。
大きなリターンを望むより破綻しないこと
韓国では、若者がこぞって仮想通貨に投資しているそうです。
それも借金して、仮想通貨を買う人もいるそうです。
これはもう投資ではなく、投機ですよね。
確かに上昇すれば大きなリターンを得ることができます。
仮想通貨は、価値の裏付けがないため、上がる時には、流れで大きく上がることがあります。
その逆も然りで、下がる時には、大きく下がる時があります。
上がってくれという思いで、仮想通貨に投資するんですね。
しかし、もし仮想通貨が下落すると、その人は、借金を抱えることになり、ステージから降りることになります。
というか、もうステージに立つこともできないってことになります。
これは正しい方法なんでしょうか。
大きなリターンをねらうとリスクも大きくなります。
従って、大きなリターンを狙わないで、リスクを小さくし、福利を活かせるように投資するべきだということでしょう。
これは本当に重要なことですね。
未来に楽観的に
アメリカにおける国民一人当たりのGDPは、右肩上がりに上がっています。
通常悲観的な意見の方がより広く広まり、より説得力があるということ。
でも、実際は、もっと楽観的でもいいんですってことです。
統計グラフにある、1850年から2010年までを見ると、GDPは右肩上がりに上がってますが、次のような大きな事象が同時に起こってるんです。
・創業された企業の約99.9%が倒産した。
・米国の大統領が4人、暗殺された。
・インフルエンザの大流行により、1年間で67万5,000人の米国人が亡くなった。
・30回の自然災害で、それぞれ400人以上の米国人が亡くなった。
・33回の景気後退が、累計48年間続いた。
・これらの景気後退を予測できた人はほとんどいなかった。
・株価が直近の高値から10%以上も下落したことが少なくとも102回あった。
・株価が3分の1に暴落したことが少なくとも12回あった。
・インフレ率が7%を超えた年が通算20回あった。
・Googleによれば、「経済的悲観論」という言葉が新聞に2万9,000回以上掲載された。
要するにこれだけのことが起こっても、GDPは右肩上がりに上昇しているということです。
細かく見ると、少しの間、下落することもありますが、大きな視点で見ると、成長しているということです。
日本の場合は少し状況が異なると思います。
逆パターンです。
みんな楽観的です。
しかし、GDPを見れば、他の国が上昇しているのに、日本は全く成長していません。
それどころか、下がっています。
こんな国、他にありませんよ。
しかし、そのことを真剣に考えている日本人ってどのくらいいるのでしょうか。
会社の隣に座っている人に聞いてみるといいでしょう。
世界経済を見る時には楽観的に。
日本を見る時には悲観的にっていうことでしょうか。
まとめ
この本は、すごい視点で書かれているなっていうのが印象としてあります。
人はおかしな行動をするが、おかしな人はいない。
その人の立場とか、育った環境。
多感な時に大きな景気変動を受けた人とそうでない人。
それぞれにより判断基準が異なるということ。
周りの人を見て、なんで金利が0.001%程度の銀行に、一生懸命預金しているのか?
物の値段がどんどん上がっていくのに、投資して少しでも増やそうとしないのか?
年金支給額がほぼ明確にわかるのに、報道で2,000万円足りないという話を聞き、急に怒り出すのか?
全て理解できなかったんだけど、それはその人の情報の分析力や、経験から、その後の行動が決められていたんだなって。
悲観論は楽観論より、賢く受け止められる。
これは正直笑えますね。
例えば、コロナに関する報道について。
コロナも変異し、オミクロン株に変異して、弱毒性になってきており、インフルエンザと同等のリスクしかないと、いくら専門家が言っても、メディアは違います。
今日、何人感染したとか。
オミクロンに感染して亡くなった人が出た。とか。
そういう悲観論的なものばかり報道します。
大丈夫です!っていう報道よりも、悲観論の方が視聴率を稼げるからです。
で、そういう報道を好んで視聴する人たち。
予想する人やコメンテーターは、とりあえず悲観的な言っておけばいいという風潮。
外れた場合は、みんないい方向に進んでいるので、誰も責めない。
しかし、反対に楽観的なことを予想していて、ダメな方に向かうと、一気に楽観的な予想をした人を攻撃し始める。
納得すると同時に、なんだかなって。
本質を捉えすぎていて、感心しました。
この本は、随所になるほどなっていう気づきがあります。
付箋と蛍光ペンで、印をつけて、何度も読み直したいなって思う本です。
本当にこれはおすすめです。