整体師(以下整):「○○さん、長いことかかりましたけど、だいぶ腰の状態良くなってきましたね。」
患者(以下患):「おかげさまでかなり楽になりましたよ。先生のおかげです。」
整:「いえいえ。我慢して通ってくださったからですよ~。」
患:「あと、肩もトシのせいか前よりも上がらなくなってね~。」
整:「じゃあ、腰がもう少しよくなったら肩の方やりましょうか。」
患:「お願いします。助かります。」
整:「またしばらく通ってもらうことになっちゃいますけど…」
患:「ああ、でも先生腕いいし、ここは保険も使えるから大丈夫ですよ。」
整:「そうですか~。じゃあ、僕もしっかりやらせてもらいますね!」
日頃よく見られるような整骨院での上記のような何気ないやり取り。
この中に重大な不正が隠されていると言ったらあなたは驚くだろうか。
しかも、貴方自身も知らぬ間に不正に手を貸し、最悪の場合共犯として犯罪者になって
しまう可能性があるとしたら。。。
今回は、そんな日常に潜む不正について暴いていきたいと思います。
何が問題か
まず上記モデルケースの状況について整理していこう。
といったところでしょうか。
一見、何も問題などなさそうだが、実はここに大きな落とし穴があります。
というのも、そもそも整骨院や接骨院などの診療所は保険適用となる範囲に厳密な規定があり、それを1mmでも外れたものには、診療報酬は支払われないという事です。
さて、その規定とは何でしょうか。
次項以降にて詳しく述べていきます。
整骨院、その規定
整骨院の看板やのぼりを見ていただきたい。
そこには
「交通事故の後遺症で悩んでる方に」
「各種保険取り扱い」
などと書かれていないだろうか。
なにが問題なのかと思う向きもあるでしょうが、実はこれらはれっきとした法令違反です。
というのも、整骨院の広告で許可されているのは
- 開業者氏名
- 資格名(柔道整復師)
- 院名
- 住所
- 電話番号
- 営業日及び時間
のみとなっているのです。
これらに少しでも外れた表記をしているものは法令違反を犯している可能性が極めて高い治療院となります。
また保険適用の範囲だが
- 骨折
- 脱臼
- 捻挫
- 挫症
- 打撲
となり、柔道整復師法や厚生労働省通知などでも、これらの急性症例のうち原因が明示できるもののみということではっきりと範囲が決まっています。
しかも、骨折や脱臼に至っては、応急処置以外で整骨院での治療を受ける場合は医師の診断と同意が必要となっているのです。
したがって、モデルケースで例に挙げたような慢性的な腰の痛みや、加齢に起因する肩の痛みなどでは保険適用とはならないということになります。
不正請求
本来保険適用外であるはずの施術に対して診療報酬を請求しているというのは、明らかな不正請求であり、不法行為です。
ただ、患者側としてはただ言われるがまま保険証を提示し、請求された金額を支払っているだけなので、何が悪いのか全く分からないという事もあるかと思います。
しかし、ここで思い返して欲しい。
日本の医療費は増大の一途を辿り、概算ではあるが、2019年度には過去最高の43.9兆円となるなど、日本の財政を悪化させる大きな要因の一つとなっています。
いつかは税金として孫子の世代にそのツケを払わせることになる医療費の一部が、不正請求よって発生したものであるということは看過できない問題といえます。
それを防ぐためには私たち一人一人が何気なく使ってしまいがちな整骨院についても不正が行われていないかしっかりと見極める必要があるでしょう。
怪しい整骨院の見分け方
では、不正をしていそうな整骨院を見分けるためにはどういうところを見ればよいのかだが、これには利用の各段階でポイントがある。
看板・のぼりの表示を見る
先に述べた通り、整骨院の広告には表示してよいものが決められており、それに外れたものは記載してはいけないことになっています。
しかしながら整骨院の看板やのぼりには「各種保険取り扱い」と書かれているものが驚くほど多いのです。
これは「当院では不正請求を行っています」と堂々と宣言しているに等しく、まずこういったところは避けたほうが間違いない。
入ったらすぐに保健証の提示を求められる
整骨院の受付で、なにも言わない先から保険証の提示を求められるのも要注意です。
というのも、これも先にのべた通り、整骨院では保険診療の適用範囲が厳格に定められており、それに該当しない症状については診療報酬を請求することができません。
まずは問診やきちんと診断や治療を受けて、保険診療に該当する症状であると認められてから始めて保険証の提示となるのが正しい流れのはずが、完全に手順として逆転してしまっていうということになります。
また、こういったケースでは、保険証の提示と共に「療養費支給申請書」(通称レセプト)という書類にサインを求められることも多いが、この書類に何も書いていない白紙の状態であったなら、完全に不正を行っていると思っていただいてよいだろう。
何もせずにその場で早々に立ち去ることをお勧めする。
長期間通わせようとする
整骨院で保険請求が可能な症状には「急性である」という文言がついている。
これも先に少し触れた通り、加齢や蓄積した疲労による慢性的な腰痛や肩こりでは保険適用とはならない。
それにも関わらず数か月にわたり整骨院に通わせ、腰が少し良くなったら今度は肩、そして今度は膝…というようにレセプトに記載する治療部位を次々に変えて長期間にわたり不正請求を続けるといった手も多く使われている(これを「部位転がし」などという隠語で呼んだりもする)。
そもそも、骨折の中でも治りにくい大腿骨の骨折でも通常3ヵ月あれば医学的には治癒させることができるのに、単なる腰痛でそれを超える期間を整骨院に通わせ続けるというのはおかしな話です。
治療期間を不自然に長引かせようとする施術者がいたとしたら、怪しいと思ってもらった方がよいでしょう。
最後に
今回は整骨院の不正の実態について述べてきたが、実際には不正請求などせず、真面目にまともな仕事をしているところも数多く存在しています。
確かに保険適用でマッサージを受けられるというのは利用する側としてはありがたい話でもあるが、それは犯罪に加担して甘い汁を吸っているに過ぎないという意識を持っていただき、正直にやっているところが馬鹿を見るということがない世の中を作っていくことも大事なことではないだろうか。
この記事が読者の諸氏に今一度この問題について考えるきっかけとなれば幸いです。