今回は、「合理的にあり得ない」。
柚月祐子氏の作品です。
最近、また柚月氏の小説にハマってるんですよね。
ハズレがありませんから。
この本も、図書館で借りました。
ちょっと指向の違う感じがしましたが。
なんか、こういうクールな感じの女性が主人公の話って好きなんですよね。
説明 注!ネタバレ
上水流涼子は、上水流エージェンシーという探偵エージェントを運営しています。
社員は、アシスタントの貴山。
東大卒の元将棋部主将。IQ140の天才。
ある不祥事により、弁護士資格をはく奪された上水流涼子は、殺し、障害以外は受けるという方針で、紹介のみで顧客に対応している。
本作は、以下の5章からなる短編集である。
- 確率的にあり得ない
- 合理的にあり得ない
- 戦術的にあり得ない
- 心情的にあり得ない
- 心理的にあり得ない
明晰な頭脳と、みんなが振り向くような美貌で、難題を解決していく。
巧妙な詐欺師に騙される二代目社長。
暴力団同士の将棋の試合に勝てるよう依頼されたり。
読んでいると、どう解決していくのか。
本当に面白い!
読んだ時の感想
概要のところではうまく説明できませんでしたが、これは相当面白い。
もう夢中で読んでしまいましたね。
短編集は、厚さ的には結構あるんですが、ついつい読んでしまいますね。
基本すごく面白いんだけど、なんで?っていうところもやはり気になってしまいます。
小説としてはすごく面白いというのは確か。
確率的にあり得ない
これは巧妙な詐欺師である高円寺に騙される2代目社長の話ですが。
最初は、例のごとく、二代目社長である本藤仁志は、クラブのママに、「未来が見える人」ということで紹介された高円寺に対して、「俺はそんなもの信じない」と言っていました。
で、自宅に招いて、未来を見てもらうことに。
そこで選ばれたのは、ボートレースの結果当て。
すべてのレース結果を当てる高円寺に、土下座して、会社の顧問になってくれと。
まぁ、そこで問題なんですが、マジシャンがやるマジックを普通に見てきた世代において、こんなもの鵜呑みにするかってまず思いますよね。
マジック見て、あれは能力だって思う奴います?
状況的にトリックを仕込む隙がないと言え、マジシャンも同じことしますからね。
お金をお客さんから借りて、それに対してマジックするとか。
要するになんでも非科学的なものにはトリックがあるんですよ。
ただ、超能力という、普通の人よりもある機能で優れた人は存在すると思います。
例えば、アフリカ大陸で狩りをしている人たちは、視力が8.0とかあるそうです。
(最近は、スマフォが普及しているので、どうかわかりませんが。)
あと、犬の嗅覚は人間の嗅覚の最大1万倍と言われています。
ある意味犬は超能力者ですよね。
そういうのは除いて未来を見るというのは、基本ありえない。
従って、大の大人がこういうのに引っかかるというのは、本当に信じられないです。
またボートレースでっていった時に、すぐに舟券をなぜ買おうとしないのか不思議でしたね。
ボートレース当てるなら、まず舟券買いますが。
外れてもいいし、もし高円寺の能力が本物なら普通に金儲かるし。
それと最後、なぜ高円寺は楊氏の申し出を受けたのか。
ボートレースの時と違うんだから、誰かの私益に絡むことは無理ですってことわるべきだろうって。
詐欺師なら、そこは用心しないと。
絶対外れてるんだから。
高円寺の行動の意味がわからないわ。
合理的にあり得ない
これは単に、恭一郎の生活に対して、朱美との離婚がどれほどのもんなんだろうって。
損失は2,000万円だから対して痛くないし。
息子は引きこもりで、すでに家庭としては機能していない。
朱美との離婚が、恭一郎への復讐にもなってないなって。
戦術的にあり得ない
正直これが一番面白かったかも。
暴力団の将棋の試合。
ただ、トリックがね。
相手側の組員との通しって。
通しはいいが、体の各部を触って教えるって、ビデオ撮ってたら怪しさ満点だろう。
それよりは、瞬きとか、目の動きとか、後でビデオ見てもわからないようなことを考えるだろうって。
あと、対戦相手の財前。
成らずの手に対して、財前クラスの腕前なら、そこは自前の将棋力で耐えることはできたろうって。
互角の将棋力なんだから。
すべてソフトの言いなりってのもよくわからんかったね。
心理的にあり得ない
予土屋は、万が一負けても100万ぐらいは何とかなるって、事前に考えています。
だけど、天見のG100に対して、嘘だろって。
結局万が一負けるのと同じぐらいのダメージってことでしょう。
そもそもの復讐は、ヤクザに隠れて予土屋が野球賭博をしているというのが、復讐ということだろう。
でも、ヤクザにそれがわかるのかな。
携帯の通信を見るのか?
2人でなんかやり取りしてるだけってことではないのかな。
そもそも天見はヤクザと絡んでないんだから。
ヤクザが予土屋に対して、勝手にやってるだろうって言っても、やってませんていえば済むのでは。
ヤクザは損してないんだから。
予土屋も最終的には、儲けもないんだから。
だから、もう少し最後の詰めが見たかったかなって。
総評
◆読みやすさ
読みやすさ:4
めちゃ読みやすい。
面白いから、すらすら読めた。
短編は章単位で読めるからいいよね。
◆意外度
意外度:4
意外度と言うか、トリックと言うか。
頭脳戦はやはりおもしろいね。
どれも、最後どうなるのかっていうところが面白い。
◆夢中度
夢中度:5
一つ一つの章が、本当にどうなるかというワクワク感があり、夢中になれる。
感想のところで、いろいろ書いたけど、でも小説としては面白い。
夢中になって、ほんとうに2日程度で読めました。
◆読んだ後のすっきり度
読んだ後のすっきり度:4
すっきり感は、各章ごとにありますね。
もっと読みたいなっていう事で、すっきり度が下がるような感じ。
これ、シリーズ化してほしいな。
しかし、これが実写化されたら、またつまらないものになるんだろうな。
読書について
本を読んでいると何か吸い込まれるように、その物語の中に没頭してしまいます。
いい意味でも、悪い意味でも。
時に深く考えさせられることもあります。
人生にとって読書、本を読むというのは非常に大切なことだと私は考えています。
最近世間では本離れが進んでいると言われています。
本を手にする代わりに、なんでもスマフォで調べたり、スマフォで小説を読んだりと。
ある意味それは時代の流れかもしれないのですが、しかし私は紙の本を手に取って読んでもらいたいと考えています。
もちろん中には読むに値しない駄作も数多くありますが、それ以上に良い本はたくさんあります。
駄作の中にもそれぞれ考えさせられることもあり、無駄な本はあまりないと考えています。
もっとみなさん本を読みましょう。
そこから何か、ほんの少しでも自分を高める何かが見つかるような気がします。
ほんの少しかもしれませんが、それが積もると立派な財産となります。